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 2010年度 研究支援 成果報告
 2011年度 研究支援 成果報告

戦後補償法制度の成立と変遷――国内被害者を中心に
直野 章子
 本研究では、国内の戦争被害者に対する戦後補償制度の成立と変遷を実証的に描きながら、立法や政策決定時に何が争点となったのかを検証し、特に、空襲被害者に対して「戦争被害受忍論」が打ち出されてきた背景を探った。

 日本の戦後補償のあり方は、国籍だけでなく国家との身分関係によって、戦争被害に対する援護を受給する権利の有無が決定されてきた。(原爆被爆者に関してのみ、国籍条項がない。)軍人・軍属とその遺家族に対しては、計50兆円もの援護がなされてきたが、被爆者や引揚者に対しては「特別な犠牲」と認めた被害に対してのみ援護が行われ、空襲被害者に対しては生活保護法体系のなかで援護が行われるだけで、戦争被害者としては放置されてきた。このように不平等な戦後補償制度が成立し、今日に至っている背景には、次の要因がある。


 ① 軍人や軍属は、遺族会などの政治圧力団体を形成し、55年体制のなかで自民党政権と相互依存的な関係を結びつつ、戦争の記憶を愛国心と接合し、また軍備拡張の機運と結びつけながら援護獲得に成功してきた。

 ②引揚者も、団体を組織して活発に政治活動を行い、「特殊な被害」を被ったとの主張が認められるかたちで、二度にわたる給付金を得ることに成功した。

 ③被爆者は、第五福竜丸事件を契機とした原水爆禁止運動の盛り上がりを受け、「唯一の被爆国の被害者」として世論の支持を集めることができた。しかし、原爆被害に対する国家補償要求は叶わず、「戦争被害受忍論」を適用されながら、放射線による晩発性の健康被害のみが補償の対象となっている。


 本研究では、先行研究を踏まえて、戦傷病者戦没者遺族等援護法をはじめとする援護政策が成立していく過程を、報道や評論などの二次資料および関係審議会の議事録や関連裁判の判例や準備書面などの一次資料を含めて実証的に検証した。
 なお、本研究を発展させる形で、研究計画をたてた結果、2011年度からの3年間の科研費(若手B)獲得につながった。