プロジェクト研究・研究集会支援
   成果報告
田中 良之先生
直野 章子先生
特色ある研究プロジェクト
   成果報告
阿部 芳久先生
荒谷 邦雄先生
石田 清隆先生
嶋田 洋一郎先生
施 光恒先生
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細谷 忠嗣先生
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三隅 一百先生
山尾 大先生
Andrea GERMER先生
 2010年度 研究支援 成果報告
 2011年度 研究支援 成果報告
中東諸国における社会運動の学際的研究
   ― 「アラブの春」後の中東イスラーム政治社会の総合的研究
山尾 大
 本研究の目的は、2011年に中東で相次いで発生した社会運動に起因する体制変動(いわゆる「アラブの春」)を取り上げ、各国の事例を比較したうえで、社会運動と体制変動の関係を包括的に分析することであった。この目的のために、報告者は以下の2つの研究を行った。

 第1に、社会運動が拡大していった要因を解明するために、世論調査を行った。これについては、報告者が数年前から研究プロジェクト・チームで世論調査を進めてきたエジプト、シリア、レバノン、パレスチナ、イスラエルに加えて、2011年度にはイラク国内で調査を実施した(分担者として参加する科学研究費・基盤研究Bと共同で実施)。その結果の一部は、山尾大・浜中新吾2012「イラク国民の政治的認知地図」『季刊アラブ』140号、山尾大・浜中新吾・青山弘之・高岡豊・溝渕正季2012「中東世論調査(イラク2011年)単純集計報告書」(http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/namatiya2/research/iraq2011/03.pdf)として発表した。そこでは、「アラブの春」を前後に、政党支持構造が大きな変化を見せていること、従来指摘されてきた政権による国家資源の配分政策が部分的に機能不全を見せ始めていること、などを明らかにした。この問題については、さらに分析を精緻化し、2012年度の日本政治学会の年次大会で報告し、論文にまとめる予定である。

 第2に、社会運動の事例研究として、イラクの詳細な分析を行った。その成果の一部は、10th Conference of the International Centre for Contemporary Middle Eastern Studies, Arab Springs: Causes and Consequences (East Mediterranean University, North Cyprus, 12-14 December 2011)において、“A Hijacked Arab Spring in Iraq: with Special Reference to the Sadr Movement”というタイトルで報告し、山尾大2012「“ハイジャック”された「アラブの春」――サドル派の政策転換をイラク政治の動態」『中東研究』513号に論文として公刊した。そこでは、大衆によるSNSなどの新たなツールを利用した街頭行動は、与党連合内の政党に主導権を掌握されると、体制強化のための道具として利用される傾向が強いことを明らかにした。今後は、新たな社会運動が既存政治勢力に換骨奪胎されなかった事例を精査し、両者の差異が何に起因しているのかという問題を分析したうえで、国際ジャーナルへの投稿を行う予定である。


 本研究プロジェクトから支援を賜ったことに深く感謝したい。