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白金族元素の迅速定量分析手法の確立と地質学・考古学・惑星科学への応用
中野 伸彦
 親鉄・親銅元素である白金族元素(Os, Ir, Ru, Rh, Pd, Pt)は,地殻を構成する岩石中には極めて低濃度しか存在しない一方,核(主に金属から構成)やマントル(主に超塩基性岩から構成)中の硫黄化合物および金属相に濃集する.また,白金族元素は強い固相濃集性をしめすとともに,変質・風化などに対する化学的耐性に強い.このような特徴は,一般に希土類元素を含めた微量元素組成によっても区分することが困難な超塩基性岩およびそれらが変質した蛇紋岩の分類に有用である.近年,海洋地殻を構成する玄武岩類や上述したような超塩基性岩の起源が,白金族元素の組成を用いて解析されるようになってきた.これらの定量分析手法としては,1)同位体希釈法を用いたTIMSでの分析,2)Ni-S Fire Assay法を用いたICP-MSでの分析が主流である.分析手法の詳細は割愛するが,両手法とも0.01 ppb (ppb: 10億分の1)オーダーの分析が可能である代わりに,前処理に高濃度の混酸を使用し,様々な前処理過程で長時間を費やす.加えて,1)は同位体が存在しないRhが測定できず,2)は多量の試料(15 g程度)が必要という欠点がある.

 本研究では,白金族元素およびAu,Reについて,グラファイトるつぼを用いたアルカリ溶融によるガラスビードから,直接LA-ICP-MSを用いて,測定する手法の確立を目指した.この分析手法は,前処理が非常に簡便であるが,世界的に見ても行われている研究機関はない.本研究では,アルカリ溶融法,LA-ICP-MSの条件を工夫し,基礎実験を通して,おおよその分析条件を決定した.本研究で得られたUMT-1(カナダ地質調査所)標準試料のデータと推奨値(R.V.)およびMeisel et al. (2004)が報告した値を表1と図1にしめす.この標準試料は白金族元素を数〜100 ppb(10億分の1〜1000万分の1)程度含む.以下に,結果と課題を記す.
 図1:隕石で規格化した白金族元素およびAuのパターン.測定値はOs, Irがやや高い値をしめすが,パターンは推奨値と類似する.
    1)すべての元素で概ね良好な値をしめし,一般的に議論される隕石で規格化したパターン(図1)では,議論可能である.
    2)含有量の低いReの測定値が,推奨値とは大きく外れる.
    3)今後,試料の不均質性を確かめる必要がある.
 以上から,本研究手法の確立は,概ね成功したと考えられるが,今後さらなる標準試料の測定による正確度の確認が必要である.本手法の確立後,実際の地質学的試料や考古学資料への応用が期待される.