プロジェクト研究・研究集会支援
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特色ある研究プロジェクト
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 2010年度 研究支援 成果報告
 2011年度 研究支援 成果報告
寛容な連帯の探究
三隅 一人
 今年度に支援を受けた研究の概要は以下である。第一に、オリジナルな鍵概念である関係基盤の概念と連帯との概念的関係を整理した。具体的には、Markovskyらの集団連帯論とSchutzのシンボル概念を接続し、集団よりも高い抽象度の連結原理として位置づけた。
 定義  関係基盤とは、紐帯の形成・維持の基盤となる共有された属性である。
 公理  関係基盤はシンボルとして<われわれ>関係を間接呈示し、その関係基盤に対応した何ほどか閉鎖的なソシオセントリック・ネットワークを想像させる。
 連帯が未知の人びとに及ぶとき、<日本人>のような抽象的な関係基盤を共有していれば、そのシンボル的な働きにより日本人全体のソシオセントリック・ネットワークが想像され、それが未知の<日本人>との間に最低限のつながりを確保する。この関係基盤によるネットワーク想像力が、Durkheimの道徳的紐帯に類した緩やかで広域的な連帯を生む。
 こうした連帯の関係基盤モデルにもとづいて、第二に、連帯高次化の仕組みを探求した。より抽象的な関係基盤のシンボル作用による連帯を、より高次の連帯とよぶ。より高次の連帯の創出には、関係基盤の抽象度のレベルに則して間接呈示の段階構造を想定できる。その段階がより高次の連帯に向けてシフトするとき、抽象度の高い関係基盤がそれなりにリアリティのあるネットワーク想像力を醸し出さなければならない。これを促す仕組みに関して、次の2つの仮説を提起した。
 仮説1  関係基盤の連結が、連帯の高次化を促進する。
 仮説2  弱い紐帯を介した被支援経験は、支援が「巡り巡る」リアリティ感覚を培って一般化された互酬性の規範を強め、連帯の高次化に寄与する。
 関係基盤の連結とは、個人が複数の異なる関係基盤に関わることにより、諸々の関係基盤に対応するネットワークが互いに連結することをいう。関係基盤の連結性が高い社会では、人びとの間に、さまざまな関係基盤で(私を含め)誰かと誰かがつながっているという経験・記憶が醸成され、一般化された互酬性の規範が強められる。これが、抽象度の高い関係基盤が醸し出すネットワーク想像力にリアリティを与える、というのが仮説1である。仮説2はこれを補強する仕組みを弱い紐帯に着目して特定している。これらは過去の調査データでおおむね支持されることを確認したが、本格的な吟味は今後の課題である。
 以上のように、強烈な集合意識に拠らない寛容な連帯の創出モデルに、一定の具体像を与えることができた。この成果は以下で公表した。
   ・「寛容社会の連帯-理論的考察」西日本社会学会69回大会(2011年5月、島根大学)
   ・「ネットワーク想像力の仕組み」日本社会分析学会122回例会(2011年12月、香川大学)
   ・「連帯高次化のネットワーク理論」数理社会学会53回大会(2012年3月、鹿児島大学)