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 2010年度 研究支援 成果報告
 2011年度 研究支援 成果報告
比較社会文化研究院 研究プロジェクト「震災と日本」
研究代表者:田中 良之
 本研究プロジェクトは、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波による災害(東日本大震災)について、比較社会文化研究院の特徴である学際的な視点から究明することを目的に実施したものである。
   第1回研究会(2011年9月29日)は、政府の福島第一原発事故調査委員を務める本研究院教授・吉岡斉氏(プロジェクト研究メンバー)による公開講演会「福島原子力発電所事故の概要と歴史的意義」として実施した。吉岡氏は委員としての現地調査をふまえ、今回の震災が予測された被害の中でも最悪ではなかったこと、つまり原発事故がもっとひどい被害をもたらす可能性があったことに言及しつつ、しかしそのような比較的「まし」な事故にもかかわらず、その損害は何十兆かかるか見通せないほどに大きく、しかもその尻ぬぐいを次世代に回すことになる問題性を指摘した。
   第2回研究会(10月26日)は自然科学の観点からプロジェクト研究メンバーである本研究院の小山内康人氏と大野正夫氏に「日本で起こる地震・津波の発生のしくみとその災害」について発表をいただいた。大野氏は、自然科学者の立場から地震学の基礎的な説明をしたのち、今回の津波の特異性について観測データからあきらかにした。小山内氏は今回の地震を地球全体の地震活動という視点から解説し、今後予測される地震、それによる被害にふれ、今後の防災対策の重要性を指摘した。
   第3回研究会(11月30日)は被災地のフィールド研究の観点から、本研究院の佐藤廉也氏をコーディネーターとして、志學館大学の岩船昌起氏(「宮古市街での津波の動態と人びとの避難行動 まちづくりと防災教育のエビデンス」)、ならびに筑波大学大学院博士課程の横山貴史氏(「農村の被災と生活・生業の復興 牡鹿半島におけるカキ養殖漁村の8ヶ月」)に研究報告をいただいた。岩船氏はこれまでなかった津波映像を用いた津波対策、避難対策の可能性についてふれ、横山氏は被災地の生業を復興するにあたって地域のまとめ役の重要性を報告された。
   第4回研究会(2012年1月18日)は、被災における倫理の問題について、プロジェクト研究メンバーである鏑木が「大震災を経験するということ─関東大震災を事例とした「被災の倫理学」の試み」と題する研究報告を行った。地震や災害の物理的現象が同じでも、その意味づけや感じられ方は異なるのであり、それによって被災後の社会の善きあり方についての構想も影響を受ける。東日本大震災後の私たちの善き社会の構想を考えるためには、歴史的な過去の経験にさかのぼり、災害に対する像と災害に対する構えを自覚化することが重要ではないかという問題提起がなされた。
   第5回研究会(2月9日)は「災害と情報」というテーマについて、東洋大学文学部の中村功氏から、被災地のフィールド調査に基づく詳細な現状報告を受けた。災害の被害を減らすためには、ふだんからの災害への備えと被災時の情報システムの確保が重要な課題である。中村氏は日本におけるさまざまな災害調査に基づいて、避難を促す教育や情報発信の仕組み、また地震によっても破壊されない情報システムの整備の状況についてふれた。

 平成23年度の本研究プロジェクトを締めくくるために、3月8日にシンポジウム「東日本大震災の現場を知る─震災後一年、そしてこれから」をアクロス福岡において実施した。本研究プロジェクトの趣旨である震災に対する学際的な観点から、被災地から遠い福岡でできるだけ現場の生の声を届けるというねらいをもって、次の四氏による講演と討論の時間をもった。都司嘉宣氏(東京大学地震研究所)「プレート境界地震を連動型にしたら、東日本大震災のような千年一度の超巨大津波が再現できるという考えは間違いだ」、鹿糠敏和氏(岩手日報社大船渡支局長)「津波被災の現場から」、吉岡斉氏(本研究院教授)「福島原発事故はどうして防げなかったのか」、秋元理匡(弁護士)「原発被害者救済活動の現状と課題」、以上である。なお福島から避難している来場者からは「専門家とされる人びとに悩まされて来た私にとって、これほど被災者の立場にたったシンポジウムははじめてです」という発言があったことを添えておく。
 本研究プロジェクトにおける研究報告や講演については、比文のホームページでも紹介しているので、以下をクリックして、ご参照いただきたい。
文責 鏑木政彦