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九州大学P&P
 ●背景

 原始古代社会構造の研究はこれまで主として墳墓・集落・威信財・土器等によって行われてきた。しかし、その方法は推論に依拠して仮説の域に止まるものが多かった。例えば、研究代表者はこれまで日本・中国・韓国における人骨歯牙の遺伝性を用いて親族関係研究を行い、考古学的仮説を検証し、親族システムを基礎とした社会構造研究を行ってきた。しかし、この方法では墓地内の血縁関係を推定することが可能である一方、婚姻による移動や通婚圏などの地域社会の実相にはアプローチし得ない。また、土器・石器・青銅器・鉄器に対しては元素分析も一定の適用が行われてきたが、従来型の蛍光X線分析による分析では産地同定に止まり、より高精度のEPMAなどを用いた産地の確定はいまだ一部にすぎない。このような研究状況であるため、親族関係研究から類推される親族集団とそれを基盤とした生存財・威信財の物流ネットワークがリンクした体系的研究には至っていないと言える。
 一方、欧米においてはLA-ICP-MSを用いて人骨歯牙エナメル質の87Sr/86Srを求め、幼児期の生育場所の相違から婚姻による移動、集団移住などの研究(Bentley et al.2002等)、あるいは土器・金属器の微量元素分析による産地同定の研究がすでに行われている。これらの分析はわが国ではいまだ行われていない。しかしながら、欧米におけるSr分析は墓地における被葬者を在地生育者と他所からの移住者とに判別するのみであり、しかも親族関係研究の基盤がないため、個々の墓地におけるトピックスで終わっている。また、金属器についても技術論に終始しており、社会構造へと展開するに至っていない。しかし、社会構造を復元し、バンド社会から国家段階への変化を体系的に捉えるためには、基盤となる親族関係・親族集団と通婚圏・経済圏といった地域社会とその拡大・複雑化の把握が不可欠であり、ヒト・生存財・威信財の「生産-流通」システムを統合的に解明する必要がある
 
その点で、高精度元素分析・EMP年代測定は方法の洗練によってこの問題の解決に貢献出来る。すなわち、LA-ICP-MSの分析ではSrの同位体比だけでなく87Srと86Srの定量値からエナメル質に固定された水の産地、すなわち生育地を同定することが可能であり、土器・青銅器・鉄器などについても最新の走査型蛍光X線分析やLA-ICP-MSによる分析を行うことにより、微量元素をpptレベルで計測可能であり、正確な元素組成を得ることが出来る。さらに、FE-EPMAによる石材等の分析では原石の形成年代を知ることにより正確な産地同定を可能とする。
 研究代表者らは、これまで東アジアにおける原始古代親族関係研究を推進し社会構造の復元を行ってきた(田中1996・2008)。また、日本における青銅器研究(岩永2001等)、中国青銅器研究(宮本2009)、弥生時代の社会構造(Mizoguchi2002)を行ってきており、元素分析等についても一定の関与を行ってきた(岩永2001等)。さらに、本研究には地球科学者4名が加わっており、岩石・水の分析に通暁しているばかりではなく、石器石材の産地同定(能登原・中野・小山内2006)等,考古資料の分析を行って成果を得ている。
 以上のように本研究は、考古学と地球科学の方法を融合することにより、東アジアにおける親族関係・親族組織を基礎としたヒトの移動、生存財から威信財までの生産-消費の物流ネットワークを解明し、九州大学に東アジアにおける埋蔵文化財の分析拠点を構築することを目的とする。


 ●特色・独創性

 本研究は、考古学者と地球科学者が共同して、LA-ICP-MS、FE-EPMA、蛍光X線分析装置等の分析機器を用いて、日本・中国・韓国・台湾出土の古人骨・石器及び石材・土器・青銅器・鉄器への非破壊による多元素同位体解析・年代測定等から、ヒトの移動、生存財から威信財までの生産と流通(物流ネットワーク)を解明する。そして、これらを総合して原始古代の社会システムを通時的に明らかにし、東アジアにおける比較研究を行うものである。
 これまで欧米で行われてきたSr分析は墓地における被葬者を在地生育者と他所からの移住者とに判別するのみであったが、本研究ではSrの同位体比だけでなく87Srと86Srの定量値からエナメル質に固定された水の産地、すなわち生育地を同定することが可能となり、さらに研究代表者が進めてきた親族関係研究の結果と対比しながら展開するため、世界で初の研究となる。また、土器・青銅器・鉄器などについても最新の高精度分析を行うことにより、微量元素をpptレベルで計測可能であり、正確な元素組成を得ることができ、さらに、FE-EPMAによる石材等の分析では原石の形成年代を知ることにより正確な産地同定が可能となるため、ヒト・モノの移動を正確に捉え、それに基づく原始古代社会モデルを構築する点は世界的にも例のない研究である。
 そして、これらに用いられる方法は、考古学・自然人類外・地球科学の方法を総合したものであり、九州大学に東アジアにおける埋蔵文化財分析の拠点として今後設置が期待される東アジア埋蔵文化財センターの一翼を担うと考えられる。