You Tube 九大比文 公式チャンネル
九州大学大学院比較社会文化学府・研究院の公式チャンネルを開設しました。
トップ  >  インタビュー
 インタビュー  
 
 
比文・華東師範大合同シンポジウム『日本と中国<個人・社会・文化>』について語る
 
お 話:比較社会文化学府教員 東 英寿
聞き手:比較社会文化学府教員 阿部 康久
 
阿部: 東先生は、11月20日に華東師範大学の先生方を比文にお招きしてシンポジウムを開かれるそうですね。1ヶ月前から比文棟の入り口にA0版の巨大なポスターが貼られていますが、気合いが入っていますね(笑)。

東: ご協力して下さった多くの先生方に感謝しております。当日は、ちょうど九大祭もあるので、九大祭関連企画として一般の方々にも公開することになりました。ただ、最初から飛ばしすぎるのではなく、小規模なものでもよいので息の長い交流を続けていくつもりだったのですが・・(苦笑)。


(写真:華東師範大との合同シンポジウムのポスター。
大々的な広報をしていますが、当初は息の長い交流を続けていくつもりだったそうです。)
画像をクリックすると拡大版が表示されます。

阿部: そうだったのですか? でも確かに、大学間の交流事業は、意外と長続きしないものも多くて、熱心な先生がいなくなったり、予算が途切れたりしたら、それで終了という例も多いと聞きます。先日も、自分の知り合いの学生が、ある九大の協定校に交換留学をしたいということで応募したそうですが、実は九大は、その大学に対して今まで一度も交換留学を申し込んだことがなかったそうです。

東: えっ、そうなんですか。実は、私もその点は心配していて、私が1人で取り仕切るのではなく、ある程度、多くの教員が参加して息の長い交流を続けていける体制を整える必要があると思っていました。今回、華東師範大学との交流を行おうと思ったのは、その辺のことを考えたからです。

阿部: と言いますと?

東: 最初に考えたことは、華東師範大学は、中国の主要大学(中国では国家重点大学と呼ばれてますが)の中でも、福岡に近く、交通の便が良い上海市にあるということです。上海の大学なら、福岡空港から飛行機に乗って1時間30分で行くことができます。福岡から東京に行くのと、たいして変わりません。今回の交流を通じて、学生さんで興味を持つ人がいたら、是非とも、一度、上海に行ってもらえたらと思います。

阿部: へー。福岡と中国は近いという話はよく聞きますが、具体的な時間を聞くと、本当に近いことが再認識できますね。とはいえ、ただ近いというだけでは、学術交流を行う理由としては、物足りないようにも思えるのですが・・・。

東: もちろん、ただ近いという理由だけで、華東師範大学との交流を計画したわけではありません。先ほども言いましたが、中国には中国教育部直属の国家重点大学と呼ばれる学術レベルが高い大学が100校程度あるのですが、華東師範大学は、その中でも高い学術レベルにある大学だと言えます。ちなみに、中国大学ランキング(2009年)によれば、同大学は、文系分野での学術研究が全国12位にランクされている有名大学です。また、師範大学という名称なので誤解を受けやすいのですが、この大学は、16の学部を持つ総合大学ですので、九大の様々な分野の教員や学生が学術交流を行うことができます。
それと、シンポジウムの開催に当たって、比文の田中院長をはじめ執行部の先生方に御理解を頂き、予算面の援助を頂いたことや、華東師範大学側では、10年来の知り合いである潘世聖教授が窓口になって下さったことも大きかったです。


(写真:華東師範大学。師範大学という名称ですが、中国有数の総合大学だそうです。)

阿部: ところで、今までは、九州大学と華東師範大学の間には交流がなかったのですか?

東: 九州大学は、北京大学・清華大学を始めとする多くの中国の有名大学との間で交流協定を結んでいるのですが、実は、華東師範大学とは、まだ全学レベルでは交流協定が締結されていません。今回のシンポジウムが、そのきっかけになればと考えています。また、今後も継続的に交流を続けていけるように、来年度には、比文の教員を先方に招聘してもらえるよう計画を立ててもいます。

阿部: なるほど。実は、すごく周到な計画を立てておられるのですね。では、肝心のシンポジウムの内容は、どのようなものでしょうか?

東: 内容的にも、近代文学や日本語教育、翻訳論、歴史研究、文化研究など、比文で行われている研究分野に近い先生をお招きする予定です。当日は、活発な議論が行われることが期待できます。実際に、招聘のために人選を進めてみると、華東師範大には、比文の交流校として、十分な研究者が揃っていることが分かりました。今後は、これ以外の分野の研究者とも、実質的な中身がある交流を深めていきたいと思いっています。また交流を続けていくことで、比文の大学院に、より優秀な留学生が入学してくれることも期待しています。

阿部: 東先生が、中国の大学との学術交流に強い熱意を持っておられることは、よく伝わって参ります。先生のご専門は中国文学、特に古典文学とのことですが、どうして、そのような分野に御関心をもたれるようになったのでしょうか?

東: 私は大学に入学して、第二外国語として中国語を選択し、大学3年の夏には1ヶ月間、上海交通大学に短期留学に行きました。毎朝6時から1時間の太極拳講座、8時から12時までの中国語の授業、昼からは小説家の講義や中国の地理講座とか餃子作りとか、それはバラエティに富んだメニューの授業がありました。週末ごとには小旅行があり、蘇州や杭州、無錫などに行きました。例えば、杭州の西湖には唐代の白楽天が作らせた堤や宋代の蘇東坡の堤があります。古典の中の詩人がいたその名所旧跡に、実際に自分が立つことができる、その感動が中国古典を志した理由です。また、向こう岸が見えない雄大な長江を見たときは感動し、上海動物園で糞にまみれて黄色になっているパンダを見たときは驚きました。帰国後、気がつくと中国語が第一外国語になってしまい、そのまま大学院に進学し中国古典を勉強したわけです。

阿部: なるほど。現在の発展している中国からは、想像できない牧歌的なお話もあり興味深いですね。駆け足になってしまい、大変恐縮ですが、先生の最近の御研究などもお聞かせ下さりますでしょうか?

東: 中国古典文学では、宋代の歐陽脩(おうようしゅう)を主な研究対象としています。歐陽脩は、中国の近世文化を切り開いた人物で、詩についての逸話を集めた「詩話」というジャンル、中国考古学に繋がる「金石学」や随筆のジャンルを創始し、儒学の新見解を提出して、歴史書、詩歌など、色々な分野の作品を残しています。彼は当時の文体の改革も成功させており、最近の私のテーマは歐陽脩の文章・文体です。さらに、私は以前、中国湖南省の大学で半年間、日本語を教えたのですが、その時中国の少数民族・土家族の人と知り合いになり、帰国後5回ほど土家族や苗族の村落を訪問し調査しました。特に、少数民族の文学に興味をもっています。また、前任の鹿児島大学在職中、薩摩藩の漢学について研究することで日本漢学に興味を持ち、現在、来年刊行の『文学の海域交流』(東アジア海域叢書)に掲載予定の日本漢学関連の論文も書いています。


(写真:2009年の上海歐陽脩国際学術研討会にて発言される東先生(右から2番目))

阿部: なるほど。中国文学以外にも多岐にわたってご活躍されておられるのですね。もっと詳しいお話をお聞きしたいのですが、大変恐縮ですが、紙面が限られております。最後に東先生から学生さんや受験生の皆さんに、何かメッセージをお願いいたします。

東: 比文の中国関係には、政治、経済、地理、文学、少数民族等多彩なスタッフがそろっています。中国に関心のある方の入学をお待ちしています。

阿部: 東先生、本日は、お忙しい中、本当にありがとうございました。