You Tube 九大比文 公式チャンネル
九州大学大学院比較社会文化学府・研究院の公式チャンネルを開設しました。
トップ  >  カルチュラル・スタディーズを学ぶ人に
 カルチュラル・スタディーズを学ぶ人に  
 
 カルチュラル・スタディーズはその名前の通り「文化」についての研究です。また、「スタディーズ」 という複数形が示唆しているように、欧米だけでなく、アジア、ラテン・アメリカ、オーストラリアなどの場において、多様な形で実践され、互いに交流・影響しあい、変化しています。この新しい研究領域は、「文化」が「政治」や「経済」といった他のカテゴリーに対してどのように影響を与え、決定因子になっているのか、さらには「政治」、「経済」、「文化」といったそれぞれのカテゴリー自体が、どのような権力関係によって形成されているのかということを検証することで、既存の学問領域を組み替えていこうという学際的な試みです。
  カルチュラル・スタディーズは、これまでアカデミズムの中でほとんど論じられなかった文化領域に立ち入ります。ロックやR&B などの大衆音楽、テレビや広告といったマス・メディア、さらには記念碑、証言、ロマンス小説、アニメやコンピューター・カルチャーなどがその例として挙げられるでしょう。また、フェミニズム、ゲイ・レズビアン運動や移民権利運動、反グローバリズム闘争などを含む社会運動に関わりつつ、それらを研究対象とします。
  こうした領域はランダムに選ばれているわけではありません。これらはすべて、これまで自明のものとされていた「文化」の概念の再検討を要請します。国民国家、人種、エスニシティを均質な単位として前提にした文化、あるいは既存のジェンダーやセクシュアリティの枠組みに沿った男根主義的な文化、「西欧」対「非西欧」と区別される文化などを別の視点から再検討しつつ、それが権力抗争や交渉なとを介しつつさまざまな矛盾をはらみながら構築されていくようすを分析しようというものです。それは、分析者が「対象」と心地よい距離を保ちつつ
行うのではなく、大学が研究・教育の場としていかなる知を(再)生産しているのか、それがレイシズム、帝国主義、(ヘテロ)セクシズムなどにどう関わっているのかを批判的・自省的に考察していこうという試みでもあります。つまり、カルチュラル・スタディーズを学ぶとは、自分自身を含む文化・政治領域への介入を行うということを余儀なくされることでもあります。
  カルチュラル・スタディーズのプログラムは、複数の教員が学生の皆さんと共に作っています。社会学からは杉山あかし、直野章子、文化人類学からは太田好信、古谷嘉章、哲学からは鏑木政彦、文学からは波潟剛、松本常彦の各教員が相互連携を図りながら、歴史学、社会思想史等の領域を交えた学際的な共同研究・教育にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。
  このプログラムは大きく二つのパートに分かれます。ひとつは、基本文献とされているテクストを読むことです。ここでは、現在カルチュラル・スタティーズと総称される領域において代表的といわれる文献や、カルチュラル・スタディーズの潮流に大きな影響を与えたマルクス主義、記号論、構造主義、ポスト構造主義、フランクフルト学派などの文化理論の再読や最近のフェミニズムをめぐる論争、ポストコロニアル批評との節合も含まれます。これらのテキストは、上に挙げた7人の教員が各自開講するセミナーで取り上げられることになります。
  もうひとつのパートは、カルチュラル・スタディーズの実践です。これは、「西欧のカルチュラル・スタディーズ」の理論を日本の文化的文脈に応用する、ということを意味しているのではありません。カルチュラル・スタディーズが知識の生産における西欧と非西欧の非対称性を問題にしている以上、ここで求められているのは日本国内の既存の学問領域はもちろんのこと、カルチュラル・スタディーズを含む西欧の人文科学全体を批判的に捉え、具体的にどのように干渉していくのかということになります。これは、院生のみなさんが、各自取り組んでいく修士・博士論文のプロジェクトを通して実践していくことになります。